片想い卒業します

「森山君、この子、覚えてるかな?」


私はスマホを操作してアルバムの中から1枚の写真を選ぶと彼に見せた。


「あ!コイツ……」


茶色のシマトラの猫。


「……覚えてる。コイツ、俺がこの公園で拾ったヤツだろ?」


「そうだよ。空って言うんだ」


「空?」


「梅雨の晴れ間の空がきれいな日に家へ来たから、空って名前を私が付けたの」


「へぇ、空か。大きくなったな」


森山君、空を見て顔を綻ばせている。


「うん、空は食いしん坊だから、あっという間に大きくなってね。今は我が家のアイドルなんだ」


私が説明すると、森山君は頷きながら空の写真を眺めている。


そこへ……。

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