片想い卒業します
梨央が心配していることは分かってるんだ。
「どうするって?」
梨央は周りを確かめると、内緒話をするみたいに声を小さくしながら
「告白に決まってるじゃない!ボヤボヤしてるとあの子に森山を取られちゃうわよ!」
「梨央、聞こえたらどうするの?」
「あ、ごめん」
ここは教室。
私と森山君の位置は遠いから、私達の会話は聞こえてないはず。
「取られちゃうもなにも、私、告白なんて考えてないから」
「それじゃあ、いつまでも片想いでいるつもり?」
「ごめん、梨央。私、今日は日直当番だから職員室へ行ってくるね」
「あ、美月!」
梨央の声を背に受けながら、森山君の脇をすり抜けるようにして教室を出た。
いつまでも逃げてちゃいけないのは自分でも分かっている。
分かっているけれど、あと少しだけ勇気が持てないんだ。