夢一夜
どのくらいそうしていただろう。気づくと夜空に唯一光を放つ、雲で出来た大陸が私を見下ろしていた。
雲の大陸に両足を着地すると、さっきまでの
私の身体を浮上させていた力が消えた。両足にはふわふわとした感触を覚える。
時刻は夜のはずなのに、昼間のように日が照
り、暖かい。一面を見渡すと、夫と一緒に暮らしていた家そのものがぽつんと建っていた。他に物や人らしいものはない。
赤い家へ、進むたび、雲の地面は淡い黄色の光の輝きを放つ。その優しげではっきりとした光に目を細めながら、住み慣れた家の前に着き、ドアノブに手をかけた。
すると、開いたドアの先にあるリビングのソファーで夫はくつろいでいた。駆け寄って、夫の顔を覗き込むと、ゆるゆると重たい瞼が開く。
今日も優しげな眼差しが静かにきらめいてい
た。
「よかった。急にいなくなったから、とても探したよ」
夫の無事にトロンと目尻が下がり、口元が緩
む。
それから夫は笑みを浮かべ、静かに言った。
「長い間夢を見ているようだ。まだ覚めてはいないらしい。しかしこれが真のように思える」
「そうね、信じられるものなら、あなたにとってはそれが真実なのよ。また一緒に暮らそう」
それからは、何かが起こることもなく、いつもと変わらない、幸せに包まれた時間が再び、一
刻、一刻ゆっくりと流れ続けた。
雲の大陸に両足を着地すると、さっきまでの
私の身体を浮上させていた力が消えた。両足にはふわふわとした感触を覚える。
時刻は夜のはずなのに、昼間のように日が照
り、暖かい。一面を見渡すと、夫と一緒に暮らしていた家そのものがぽつんと建っていた。他に物や人らしいものはない。
赤い家へ、進むたび、雲の地面は淡い黄色の光の輝きを放つ。その優しげではっきりとした光に目を細めながら、住み慣れた家の前に着き、ドアノブに手をかけた。
すると、開いたドアの先にあるリビングのソファーで夫はくつろいでいた。駆け寄って、夫の顔を覗き込むと、ゆるゆると重たい瞼が開く。
今日も優しげな眼差しが静かにきらめいてい
た。
「よかった。急にいなくなったから、とても探したよ」
夫の無事にトロンと目尻が下がり、口元が緩
む。
それから夫は笑みを浮かべ、静かに言った。
「長い間夢を見ているようだ。まだ覚めてはいないらしい。しかしこれが真のように思える」
「そうね、信じられるものなら、あなたにとってはそれが真実なのよ。また一緒に暮らそう」
それからは、何かが起こることもなく、いつもと変わらない、幸せに包まれた時間が再び、一
刻、一刻ゆっくりと流れ続けた。