フェアリーテイルを夢見てる
心の底から沸々と沸き上がって来てしまう、優越感による笑いを必死に押し留めながら、私は任務を遂行しました。


「もー、そんなのんびりと挨拶してる場合じゃないよ。早く起きて、仕事に行く準備をしないと!」

「分かった分かった。そんなに怒るなよ」


ギャーギャーと喚く私に、巧さんは苦笑いを浮かべながらそう答えると、右手を伸ばし、長い間鳴り続けていたベルのスイッチを切りました。

そして上体を起こし、ベッドから降りて、そのまま一直線にキッチンへと向かいます。

まず真っ先にコーヒーメーカーを作動させ、冷蔵庫から取り出した耐熱容器をレンジに入れて加熱を開始してから、次いで私の朝ごはんの用意をするのです。


「はい、ケイ子。お待たせ」


お水と、料理の乗ったプレートを私の体の前に置きながら巧さんは言いました。


「いくらお腹が空いてるからって慌てて食べちゃダメだよ。ゆっくりと、よーく噛んでね」


……どうやら彼は、私が毎朝自分を起こしに来るのは、食事を催促する為だと思っているようです。

なんという不名誉な勘違い。
失礼しちゃいます。

空腹状態で騒ぎ立てるなんて、私はそんな子供ではありません。

赤ちゃんの時から一緒にいるからまだまだその時のイメージが抜けないのでしょうか?

そりゃあ、180センチもある大男の巧さんと比べれば私の体はとても小さいですけど。
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