フェアリーテイルを夢見てる
ついつい非難がましく見てしまう私も悪いのかもしれませんが、後ろめたくないのならば、巧さんももっと堂々としていれば良いのに、と思ってしまいます。

そんなに何回も説明されなくても私はちゃんと覚えています。

私は巧さんが想像しているよりも、だいぶ色々な事が分かっているのですから。

私をそうさせたのは巧さん自身です。

大好きな人が紡ぐ言葉だから一言も聞き漏らすまいと熱心に耳を傾けましたし、それにより、瞬く間にその意味も理解できるようになって行ったのです。

愛の力は偉大だな、としみじみ思うのでした。


「さてと。そろそろ行くか」


朝食を食べ終え、後片付けをして一旦洗面所へと向かった巧さんは歯みがきを済ませた後、再び戻って来てそう宣言しました。

そしてネクタイを締めながら言葉を続けます。


「今日も遅くなると思う。夕飯はちゃんとセットしておくからね。いつもの時間に食べなさい」


何だか巧さんは常に私のご飯の心配ばかりしているように思います。

でも、それは大変ありがたい事ですので。


「はい。分かってるから大丈夫」


私は素直にそう答えました。

そして、ジャケットを着込み、鞄を手に歩き出した巧さんの後に続いて玄関先までトコトコとくっついて行きました。


「じゃあね。良い子で待ってるんだよ」

「はーい」

「行って来ます」

「行ってらっしゃい♪」
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