一番星シリーズ~おまけSS
そのまま優太も車に乗り込んできた。



「行きたいところはある?」



優太はシートベルトを締めながら、視線だけをこっちに向けてそう言うけれど、あたしは優太と一緒なら、



「どこでもいいよ」


「それ、一番困るな」



あたしの言った言葉に困ったように苦笑する優太。


そんな顔を見てしまうと、



「海に行きたい」



ほんとは昨日一人で『彼とドライブデート』という特集を組んだ雑誌を見て、海に行きたいなって思っていたんだ。


でも優太が他に行きたいところがあるのかも……と遠慮してしまった。


優太はあたしが行きたいと言えばどこへだって喜んで行ってくれるってわかっていたはずなのに。


隣に座る優太をちらっと盗み見ると、やさしい笑みを浮かべながらあたしの方を見ていて。



「オッケー、海に向かうぞ」



あたしの髪をくしゃくしゃと撫でながらそう言って、車を発進させた。
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