異常と呼べる愛を孕んで、君に吐き出し、自殺しよう

ーー愛していますから。

それが、答え。
人として駄目になろうとも、それが好きな相手ならば手を差し伸べてくれる。

彼女には気付かされてばかりだ。そうだ、俺もそうだ。彼女がどんな風になろうとも、俺は彼女を好きなまま。駄目になろうと、腐ろうと、嫌われようと、ずっと好きのまま。ずっと愛し続けていられる。

わがままを承知で口にした。
一緒にいてほしいと。君と会えない間、寂しさでどうにかなりそうだと。伝えれば、告白した時以上の戸惑いを彼女は見せたが、決して俺を拒絶しないーー愛してくれているから、俺のために何とかしようとまた真剣に考えてくれると言ってくれた。

俺と彼女の関係性は周りとは違うんだ。
駄目になることなんかない。以前、彼女にプレゼントしたプリザーブドフラワーを思い出した。

枯れることのない花。人の手で育み、人の手を加え、美しいまま保存出来る花。彼女という綺麗なモノは既に育まれ、俺の手中にある。だとすれば、後は外的要因を排除していけばいい。俺には彼女以外の物は全て要らないものでまとめられるが、彼女はそうではない。

例えば、元カレ。
彼女は俺に心配かけまいと口にしなかったが、別れた以降も何かにつけて連絡をしてくる男。俺との契約が終わったあの別れさせ屋もいなくなり、フリーとなった男は思うような相手が見つからなかったらしい。


何度となく、彼女は『もう私には恋人がいます』と返事していたが、彼女の優しさに漬け込んだ男は『困っているんだ』と口にして会う口実を作ろうとしていた。

男への情けは捨てきれないが、典型的な下心は見えているため、彼女と男の関係はメールのみでしかないものの、やはり刺し殺すことにした。彼女が迷惑しているのだから。彼女を不幸にする奴は殺すべきだろう。

捕まらないための下準備。男の行動範囲を熟知し、一人で外にいる時間を定めて、出張先で出刃包丁を購入し、後は近々雨になる日を見計らってーーと、後少しで男を殺せるところまで至ったが。

ーー実は、元カレから頻繁に連絡が来るようになって。連絡先を変えたんです。

彼女自身が、男という存在を抹消してくれた。無論、彼女の中での話になるが、それでも嬉しかった。自ら、俺との関係性の邪魔となる要因を排除してくれたんだ。俺以外は要らないとも言ってくれたようなもの。

黙っていてごめんなさいと謝る彼女に、いいんだよと返す。

俺も似たようなことをするつもりだったのだから。外的要因を排除したかったのは彼女を守りたい一心であると思ったが、気付かない内に不安も芽生えていた。彼女自身が、俺から離れてしまうのではないかと不安だった。

俺は、愚かだった。
彼女が俺を捨ててしまうと思っていたのだから。そんなことないのに。

相思相愛。これに尽きる。俺と彼女は、正に『愛し合っている』のだと実感できた決定的な出来事だった。



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