異常と呼べる愛を孕んで、君に吐き出し、自殺しよう

もっともっと、愛してほしいんだ。
ずっとずっと、愛しているから。

だから、未だに俺と住むことに戸惑っている彼女が理解出来なくなってきた。

俺の部屋が嫌なら、彼女が気に入るような物件をいくつか探しておいた。金銭面に不安があるようなら俺が全面的に援助することも申し出た。何なら、君名義の通帳を作り、俺の全財産をそこに入れよう。生活面での不安ならば、君は何もしなくていい。俺が全部するから、いてくれるだけでいいとも言った。彼女にとって利益にしかならないことだらけだと言うのに、話すほど彼女との距離が離れていく気がした。不利益なんかない。不自由もなく、大好きな人と更に時間を共有出来るというのに何故?

ーーそんな関係性は、違うと思うんです。

そう言って、泣きそうになる彼女。

「ハハッ。それだったら、彼女そっくりのラブドールでも置いとけばいいんじゃね?」

そう言って、せせら笑う奴。

異常と称された俺には何がいけないのか、分からなかった。相手を幸せにするためだけの行動をしているのに、どうして嫌がられるというのか。

彼女と俺の間に小さな亀裂が出来た時だった。理解しがたいことではあるが、彼女と距離が出来てしまったことは確か。修復しようと、世間一般で言う『正常』の恋人関係を意識した。

それぞれ互いの時間を尊重しあい、過度の干渉をしない。“表向きには”。

彼女に嫌われたくないため、そんな“理解ある恋人”の皮を被っていたが、画面向こうの彼女ーー俺のことを考えてもいない彼女を見るのはつらかった。

つまらないテレビを見て笑い、下らない友人との話に花を咲かせ、一人でも深い眠りについてしまう。

これが『正常』。
恋人が近くにいなくとも、普通に生活出来る。

納得のいかない『正常』だった。
でも、無理にでも納得させるしかない。

でないと、それこそーー
彼女から見離されれば、そこで“俺”は終わるのだから。

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