クールな次期社長の甘い密約
「それは、美容院に行った後の話し。専務が茉耶ちんを初めて受付で見た時、"こけし女"とか言って激怒したんでしょ?
なら、すぐに異動させてもいいのに、わざわざポケットマネーで美容院に行かせてくれたって事は、異動させられなかった事情があったんですよ」
「あん? 事情って何よ?」
一気にテンションが下がった森山先輩がめんどくさそうにため息を付いている。しかし、麗美さんは自信満々だ。
「専務は茉耶ちんを罵倒した後、茉耶ちんがなんで受付になったかを調べたのよ。そして、正しい配属をしたと思っている人事から宮川先生の姪だって報告を受けた。
いくら専務でも、そんな事情なら無下に異動させるワケにはいかないでしょ? それなら少しはまともになる様にって美容院に行かせた」
麗美さんはドヤ顔でニヤリと笑うが、今度は私と森山先輩が苦笑い。
「て事は何? アナタは専務が今でも大沢さんを宮川先生の姪っ子だと思ってるって言いたいの? それが事実なら、相当なマヌケだわ」
「マヌケかどうかは分かりませんけど、専務も次期社長の座が危ういって危機感を持ってるみたいで、取締役や大株主をこっそりゴルフ接待してるって噂も聞きますし……出来るだけ味方を増やしたいと思っているんじゃないですか?」
麗美さんの説明を聞き、再び森山先輩のテンションが上がる。
「ああ、なるほど。常務側に居る宮川先生を姪っ子を使って自分の味方に付けようとしてるって事か……」