クールな次期社長の甘い密約
「絶対そうですよ。宮川先生だって、可愛い姪っ子に彼氏を応援してくれって言われたら専務側に寝返るかもしれませんしね」
「ほほーっ、さすが有名大学を出てるだけの事はあるわね。お利巧さんだわ。その推理、当たっているかもよ」
麗美さんの話しはあくまでも彼女の想像。でも私は聞き流す事が出来ず、じっとりと汗が滲んだ手をテーブルの下で強く握り締めていた。
もしそれが本当なら、私は小沢真代さんと間違えられて利用されてるって事だよね? だとしたら、今までの専務の優しい言葉は全部嘘? 社長になる為の嘘だったって言うの?
呆然と下を向き、一点を見つめて唇を噛む。そんな私の様子に気付いた二人が慌ててフォローしてくれたけど――……
「大沢さん、これはあくまでもこの新人秘書の推測だから……」
「そ、そうだよ。いくらなんでも専務がそんな勘違いするなんて有り得ないし……今のは冗談だって」
――……不安を拭い去る事は出来なかった。
「いえ、そうかもしれません……専務みたいな素敵な人が本気で私を好きになるワケないですよね」
信じたくないけど、そう考えれば全て納得がいく。いくらイメチェンして激変したとしても、専務の周りには私以上に綺麗で魅力的な女性がいっぱい居る。そんな事にも気付かず浮かれていたなんて……自分が情けない。
私が宮川先生の姪っ子じゃないって事は、もう専務の耳にも入ってるはず……きっと私は専務に振られる。