クールな次期社長の甘い密約
そうなると何も知らずに倉田さんを慕う麗美さんが気の毒になってきて、ついお節介心が顔を覗かせる。
「麗美さん、こんな事言うのはなんですが……倉田さんはやめた方がいいと思います」
当然、麗美さんはその理由を聞いてくる。でも、麗美さんの気持ちを考えるとどこまで話していいものかと迷ってしまう。
私のハッキリしない態度に麗美さんだけでなく森山先輩までもが痺れを切らし詰め寄ってくる。
「もぉ~焦れったいわね! 何か知ってるのなら言いなさいよ」
「そうそう! ちゃんと理由を言ってくれないと分かんないじゃない」
二人に責められ仕方なく重い口を開く。
「実は私、宮川先生の姪っ子さんの件で倉田さんに脅されたんです……」
昨日、車の中で専務を待つ間、倉田さんと交わした会話を二人に伝えると森山先輩は「倉田課長なら言いかねないわね」って納得していた。けれど、倉田さんが好きな麗美さんは困惑気味に眉を寄せる。
「倉田課長がそんな事を? 信じられない……」
本当は昨夜の出来事も話した方が良かったのかもしれないけど、さすがにそれは言えなかった。
落ち込んでいる麗美さんの姿を見て、言わない方が良かったのかもと後悔し始めたした時だった。急に顔を上げた麗美さんが声を張り上げる。
「私、確かめてみる!」
「確かめるって何を?」
「明日、仕事が終わってから秘書課で親睦会があるの。その時に倉田課長が何を考えているのか確かめてみるよ」