クールな次期社長の甘い密約

「うそ……でしょ?」


麗美さんはそう言ったきり黙り込んでしまい、森山先輩も手で口を覆ったまま絶句している。


「麗美さん、黙っててごめんなさい。でも、自分の気持ちに気付いたのは最近なんです。倉田さんは素っ気なくて何を考えてるか分からない人だけど、彼の前だとなぜか素直になれて凄く安心出来るんです」


専務と結婚が決まった私が他の男性を……それも彼の秘書の倉田さんを好きになるなんて許されない事。二人に軽蔑されても仕方ない。それを覚悟で正直に打ち明けたんだけど、やっぱり二人の反応が怖い。


やっと出来た友達を失うかもしれないという恐怖で手に汗が滲み、心臓の鼓動が早くなる。


そして、目の前の麗美さんが大きなため息を付いたのを見て、なんて言われるんだろうと身構えたんだけど、彼女が発した言葉は意外なモノだった。


「別に気にする事ないんじゃない? 好きになっちゃったなら仕方ないよ。茉耶ちんは、専務より倉田課長の方が魅力的に思えたワケでしょ?」

「えっ……」

「そうそう、誰でも相性ってのがあるんだから。大沢さんと倉田課長は相性が良かったのよ。まぁ、男と女はそんなモノなんじゃない?」


森山先輩まで……こんな自分勝手な私の気持ちを理解しようとしてくれている。


二人の言葉がとても有難くて、今まで思い悩んでいたのが嘘の様に心が軽くなった。


そして気付いたんだ。私は、この苦しい胸のうちを誰かに聞いてもらいたかっただけなんじゃないかって……一人で抱え込むのに疲れ、何もかも吐き出したかったんだと……

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