クールな次期社長の甘い密約
嬉しそうに微笑んだ母親だったが、突然「あっ!」と大声を上げる。
「ちょっと、秘書さんどうしてるのよ? 何も食べてないんだから起こしてきたら?」
「あぁっ! 倉田さんの事すっかり忘れてた」
慌てて二階に上がって倉田さんが寝ている部屋を覗いたが、布団はもぬけの殻。どこに行ったのかと探していたら、おばあちゃんの部屋から微かに話し声が聞こえてきた。
倉田さんがおばあちゃんの部屋に? まさかとは思ったが、念の為、ソッとドアを開けてみると倉田さんとおばあちゃんが楽しそうに談笑していた。
「倉田さん、何してるの?」
「何って、見ての通り、おばあ様とお話しさせて頂いてるんですよ」
倉田さんが言うには、二時間ほど前に目が覚め、私達が居る一階に行こうとしたら、ちょうどトイレから出てきたおばあちゃんと廊下でバッタリ会ったそうだ。
「おばあ様に、美味しい羊かんがあるので部屋でお茶でも飲まないかと誘われましてね」
「ヤダ、倉田さん、おばあちゃんにナンパされたの?」
ちゃぶ台で羊かんを食べている二人の姿が妙にウケてケラケラ笑っているとおばあちゃんが「もしかして……茉耶かい?」って目を見開く。
「うん、おばあちゃん、ただいま」
「まぁ~可愛くなっちゃって~! 見違えたよ」
隣に腰を下ろした私の顔を撫でまわし、大興奮のおばあちゃん。
「そんなに騒いだら、また熱出るよ」
「心配せんでいい。もうすっかり元気だよ」
「ならいいけど……で、二人で羊かん食べながら、なんの話ししてたの?」