クールな次期社長の甘い密約

美のプロに褒められ思わず顔が綻ぶも、すぐに、これ、誰にでも言うリップサービスってヤツだよね? なんて思ってしまい素直に喜べない私。


人並になれば、それでいい。と苦笑いを浮かべ立ち上がろうとした時だった。あの正体不明の男性が個室のドアを二回ノックして顔を覗かせた。


「まだ終わりませんか?」

「あ、はい、お待たせしました。今ちょうど終わったところです。どうです? 凄くキュートな女性に変身したでしょ?」


店長が私の座っている椅子をクルリと回し、見てくれとばかりに両手を広げる。すると、さっきまでずっと無表情だった男性が大きく目を見開き、凄い形相で私を睨んできた。


げっ! 何? この反応……もしかして、この人の思っていた人並のレベルに達してないって事? そっか……やっぱ店長が言ったのはお世辞だったんだ。


ガックリ肩を落とし下を向くと、店長が横から手鏡を差し出してきて、私の手に握らせる。


「ほら、ちゃんと自分の顔を見てごらん。めっちゃ可愛いから」


まだ言ってる。リップサービスはもういいのに……


ため息を付き、どんよりした気分で鏡を覗き込む。すると――


「ぎゃ~っ! 何これ? 誰よ?」


鏡に映っていたのは、見た事もない愛らしい大きな目をしたぽっちゃり唇の可愛い女性の顔。


「ててて、店長さん……これ、ホントに私ですか?」

「そうだよ~こんな激変した女性は初めてだよ」


それは正しく青天の霹靂。まさか自分が見ても誰か分からないくらい変わってしまうとは……メイク恐るべし……

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