クールな次期社長の甘い密約
その質問に答えたのは、おばあちゃんだった。
「茉耶は同級生の大樹(だいき)君を覚えてるかい?」
「覚えてるも何も……私を一番いじめてた子だよ」
「その大樹君が地元の農協に就職してウチに挨拶に来たんだよ。その時、茉耶の事を凄く気にしていてね……」
大樹君は恐縮しながらおばあちゃんに言ったそうだ。
子供の頃、私に嫌がらせをしていた事を後悔してる。でもそれは、私が嫌いで意地悪していたワケじゃない。そして、他の男子も自分と同様、私を嫌っていたんじゃないと……
「好きな子には意地悪してしまうってアレですよ。アナタの気を引きたかったのでしょね」
でも、私が急に地味な子になってしまったので、周りの子達は動揺して話し掛けられなくなったそうだ。
「うそ……私、嫌われていたんだとばかり……」
「全て茉耶の勘違いだったんだよ。その話しを大樹君に聞いた時は嬉しくてね。涙が出たよ」
「おばあちゃん……気にしてくれてたんだ」
「当たり前だろ? 茉耶が人嫌いの陰気臭い子になってしまって、このまま結婚出来なかったらどうしようって心配してたんだよ。でも、こんな立派なお兄ちゃんと婚約して……おばあちゃんは嬉しいよ」
えっ? こんな立派なお兄ちゃんって……? もしかして、おばあちゃん勘違いしてる?
「この倉田さんってお兄ちゃん、真面目そうでいい人じゃないか~。きっと茉耶を幸せにしてくれるよ」
倉田さんは苦笑いして首を振っていたけど、私はすぐには否定出来なかった。