クールな次期社長の甘い密約

「バカな事いわないで! 確かに倉田さんは愛想はないけど、根は優しくていい人だよ。自分の事より専務を優先する優秀な秘書なんだから……問題なんてあるワケないじゃない!」

「麻耶……どうしたんだ?」


ムキになって怒鳴る私を両親がポカンとした顔で見上げている。


あ……私ったら、何怒鳴ってんだろう……


我に返ると呆気に取られている両親を残して居間を出た。そして、再び階段を駆け上がり自分の部屋に飛び込む。


倉田さんの事を少し悪く言われただけで、あんなに腹を立てるなんて私、どうかしてる。


ベットに突っ伏し目を閉じれば、浮かんでくるのは専務ではなく倉田さんの笑顔。そんな自分が許せず、また怒りが込み上げてきて拳を枕に叩きつけた。


私の婚約者は専務なのに……どうして倉田さんの顔がチラつくのよ! 





――そして……「……んんっ? ライン?」


知らないうちに眠ってしまった私は、専務からのラインの着信音で目が覚めた。


《茉耶ちん、今朝は色々すまなかった。今新幹線で浜松を過ぎたところだ。東京まではもう少し掛かりそうだから、着いたらまた連絡する。ご両親にも謝っておいてくれ》


「専務……」


倉田さんの事は一言も触れてない。まだ怒っているのかな?


だから私も倉田さんの事には触れず返信した。


《こちらの事はご心配なく。気を付けて帰って下さいね。会長の様子が分かったら連絡お願いします》

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