クールな次期社長の甘い密約
だからおばあちゃんは、家出してきた事を知っても母親を追い返さず、嫁として迎え入れた。好きな人と引き裂かれる事がどんなに辛い事か、おばあちゃんは誰よりも分かっていたから……
「でもまさか、あんなぶっ飛んだ常識破りの娘だとは思わなかっけどね。でもまぁ、優子さんは畑仕事も嫌がらずやってくれるし、和也を大切にしてくれてる。それに、可愛い孫を産んでくれたしね。いい嫁だよ」
「おばあちゃん……」
そして、先生への想いを胸に秘め過ごしてきたおばあちゃんだったが、半年ほど前、幼馴染みの梅さんが仙台に旅行に行った時、体調を崩して駆け込んだ医院に先生が居たと聞き、居てもたっても居られず連絡してしまったんだと……
「でもまさか、仙台の医院を畳んで帰って来てくれるとは思わなかったよ」
幸せそうに微笑むおばあちゃんを見て「時間は掛かったけど、先生とまた恋人同士になれて良かったね」と言うと、急におばあちゃんの表情が曇る。
「そうなんだけどね、一つだけ後悔してる事があって……」
「えっ、何?」
何度も聞いたが、おばあちゃんは言いづらそうにモジモジするだけでなかなか教えてくれない。それでもしつこく食い下がるとやっと、恥ずかしそうに話し出した。
「あの人とは純愛で、キスもした事なくてね……あの時に思い切ってエッチしときゃ良かったって後悔してるんだよ」
「え゛っ……エッチ?」
そのワードを聞いた瞬間、しつこく聞いた事を激しく後悔した……