クールな次期社長の甘い密約

この状況って、ドラマとかで有りがちな、地味な主人公がどこかの御曹司に見初められ美しく変身するっていうシンデレラストーリーみたいだけど、実際にはそんな夢の様な話しは有り得ないワケで、ドラマの中だけの話しだと思ってた。


なのに、そのシンデレラストーリーを自分が経験する事になるなんて未だに信じられない。


でも、よくよく考えてみれば、私は御曹司の専務に見初められたワケじゃないし……ドラマと現実の世界は違うよね。私ったら何考えてんだろう。


自分の恥ずかしい妄想を打ち消す様に身を乗り出し、正体不明の男性に感謝の気持ちを伝える。


「えっと……今日は、色々有難う御座いました」

「お礼には及びません。私は専務の指示で動いていますので……」


バックミラー越しに目が合った男性は相変わらず無表情で、何を考えているのかサッパリ分からない。


「専務はなぜ、一社員の私を美容院や眼科に? 津島物産には、そういうサービスがあるのですか?」


大真面目で聞いたのに、男性は私の質問を鼻で笑いバカにした様に言う。


「面白い事を言いますね。そんなサービスはありません。こんな事を社員全員にしていたら会社が潰れます」

「では、なぜ?」

「あなたの容姿が我慢出来ないくらい酷かったからでしょう」

「あ……なるほど」


専務の激怒ぶりは尋常じゃなかったもんな……やっぱり、これが現実だ。でも、我慢出来ないからって、ここまでしてくれるって妙だよね?


その疑問を口にすると――

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