クールな次期社長の甘い密約

それは、専務の言う事には絶対服従。何があっても専務を優先し、専務が社長になるまでは、自分が兄であるという事を忘れ尽くす事。それが出来るのなら入社を認めるというモノだった。


「そんな条件を呑んだのですか?」

「もちろんです。私は専務を社長にする事が君華さんへの恩返しだと思い、今まで尽くしてきました」


そうだったんだ……だから倉田さんは専務を社長にしようと一生懸命だったんだ。


「今までその気持ちが揺らいだ事など一度もありませんでした。でも、大沢さんに出会って私の気持ちは大きく揺らいだ。そして、専務を裏切ってしまった」


天井を見上げ、ため息を漏らす彼を見て私の心は乱れた。


「私を抱いた事……後悔してますか?」


恐る恐る聞いてみると倉田さんは「後悔はしていません」と笑顔で首を振る。


「大沢さんとこうなった事は許されない事ですが、正直、アナタを抱いた事に後悔はありません。しかし、大沢さんには悪い事をしてしまった」

「私に?」

「専務しか知らないアナタを私の手で汚してしまったから……」

「汚したなんて……違います。これは、私が望んだ事です。倉田さんのせいじゃない」


体を起こし、倉田さんの胸に縋ると彼は私の頭を撫で囁く様に言う。


「しかし、大沢さんは専務と結婚すると決めた。それは、専務の愛が本物だと分かったから。そして、専務を生涯の伴侶として愛しぬく覚悟が出来たからですよね?」

「あ……」


倉田さんの言葉は私の胸に鋭く突き刺さった。


私は罪深い女だ――……

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