クールな次期社長の甘い密約
ここは、倉田さんを信じるしかないか……
必ず来て下さいと念を押し、倉田さんに言われたフラワーショップの前で待っていると約束通り倉田さんがやって来た。
そのまま止まる事無く私を追い越して歩いて行く倉田さんに付いて行くが、いつまで経っても倉田さんの足は止まらない。
「いったい、どこに行くんですか?」
何も言ってくれない倉田さんにイラつき、小走りで彼の前に出ようとした時だった。どんくさい私は点字ブロックにヒールを引っ掻けてバランスを崩す。
「わわっ!」
危うく転びそうになった私を振り返った倉田さんが抱き止めてくれた。
「ったく、危なっかしいお嬢さんだ」
倉田さんは呆れていたけど、懐かしい倉田さんの香りに包まれた私は体が火照り、いけない感情が蘇ってくる。愛しさと切なさが入り混じったどうしようもない感情が……
けれど、倉田さんは無情にも私の体を離し、少し先のビルを指差す。
「私が泊まっているホテルです」
「……ホテル?」
「この辺りの店に入ってもいいのですが、会社の人に見られたらマズいですからね。ここなら誰かに見られる心配はありません」
「あ、でも、ラブホの一件があったから、ホテルというのはちょっと……」
というのは建て前で、本当はホテルの部屋で彼と二人っきりになったら、自分の感情を抑えられるか自信がなかったんだ。
「抵抗があるなら帰って下さい。私は別に話す事はないのですから」
「ちょっ……それは困ります。分かりました。行きます。倉田さんの部屋に行きますから……」