クールな次期社長の甘い密約

想像妊娠……?


想いもよらぬ展開に愕然として言葉を失う。でも、私よりその事実を知って驚いたのは、間違いなく木村さんだろう。


木村さんは、子供が居る限り専務と縁が切れる事はないと思っていたから、暫くその事実を認める事が出来なかったそうだ。


「仕事を辞めた後だったし、何もかも失った様な気がして自暴自棄になってたの。でも、倉田課長には本当の事を言わなきゃいけないって、ずっと気になってた」


煙草を持つ指を震わせ、虚ろな目で遠くを見つめるその姿は、会社に居た頃の気高く凛としていた木村さんと同一人物とは、とても思えなかった。


「それでね、こんな事大沢さんに頼むのは間違ってるかもしれないけど、アナタから倉田課長に本当の事を伝えてもらえないかしら?」


えっ、私から倉田さんに……?


「……ごめんなさい。それは無理です」

「そう……そうよね。そんな都合のいいお願い無理に決まってるわよね」

「あ、いえ、そうじゃなくて、実は倉田さん、専務に会社を解雇されて今どこに居るが分からないんです」

「えっ? 倉田課長が解雇されたですって? どうして? 理由は?」

「それは……私のせいなんです」


専務を奪った私が倉田さんとの仲を疑われ、その結果、倉田さんが会社を解雇さけたと知れば、木村さんは私を恨むだろう。でも、木村さんだって言いたくない話しをしてくれたんだもの。私も本当の事を話さなきゃ……


そう思い、倉田さんが解雇された理由を話すと木村さんの顔が引きつり、私の腕を凄い力で掴んだ。

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