クールな次期社長の甘い密約
「その専務に送られてきた写メって、倉田課長の顔が写っていたの?」
「はい、誰が専務にその写メを送ったかは分かりませんが、私と倉田さんが抱き合った後、ホテルに入って行く姿がハッキリ写ってました」
「何それ、嘘でしょ?」
私の体を揺すり怒鳴る木村さんを見て、軽はずみな行動で倉田さんに迷惑を掛けた私に怒っているんだと思った。
「倉田さんには、本当に申し訳ない事をしてしまいました」
「そうじゃなくて……あの画像は送らないって約束したのよ。なのに、どうして……」
「えっ、今なんて言いました?」
取り乱す木村さんをなだめ事情を聞くと――……
――それは、妊娠が間違いだったと気付いた数日後。
ずっと部屋に引きこもっていた木村さんは、このままではいけないと思い気分転換のつもりで久しぶりに新宿に出掛けた。すると、ウインドショッピングしていた木村さんに親しげに声を掛けてきた人が居た。
「彼女は、自分は以前、津島物産の庶務課に居て私の事を知ってるって言ったわ。そして、私が専務と付き合っていた事も知っていたの」
その女性に誘われカフェに入ると女性はいきなり木村さんに「アナタは可哀想な人ですね」って言ったそうだ。
「専務との事は秘密にしていたのに、噂になってたみたいね。殆どの社員は知ってるって言われたわ。
私が受付の新入社員に専務を奪われ、やけくそになって行きずりの男と関係を持ち、妊娠したから会社を辞めたなんて噂も流れていたみたいね」
悲しそうに苦笑いする木村さんに掛ける言葉がない。