クールな次期社長の甘い密約
「情けない話しよね……今なら笑ってそう言えるけど、あの時の私は精神的に参ってて、聞き流す余裕すらなかった。だから、そんなくだらない噂話しに敏感に反応して動揺してしまったの。
すると彼女は雑誌を取り出し、アナタと専務の仲睦まじい姿が載っている記事を私に見せて言ったのよ。『この二人、許せませんよね?』って。私は迷わず頷いてた。そうしたら、あの画像を出してきたのよ」
木村さんは怒りに震え、その勢いで専務がプライベートで使っているスマホのアドレスを女性に教えてしまった。
でも、親切にしてくれた倉田さんに迷惑は掛けたくないと思い、倉田さんとは分からない様に加工して欲しいと頼んだ。
「その時は怒りに任せアドレスを教えてしまったけど、家に帰ったら怖くなって教えた事を後悔したわ。だから彼女に電話して、やっぱりあのアドレスには送らないでってお願いしたの。
彼女は分かったって言ったわ。写メは送らないから安心してって」
しかし、女性は木村さんとの約束を破り、加工せずそのまま専務に写メを送ってしまった。その結果、倉田さんが会社を辞める事になってしまったんだ。
「あれ以来、彼女からなんの連絡もなかったからメールはしてないと思っていたのよ。なのに、そんな事になってたなんて……」
項垂れる木村さんを責める気持ちにはなれなかった。
木村さんは、もう十分辛い思いをしてきたんだもの。そんな彼女を責める事なんて出来ない。ただ、木村さんとの約束を破ったその女性は許せない。
「木村さん、私にその女性の名前、教えて下さい」