クールな次期社長の甘い密約
「おーおーさーわぁ~……」
地の底から響いてくる様なドスの利いた声に身震いし、全身の毛穴から汗が噴き出す。
「ひいっ……森山先輩、落ち着いて下さい」
「はぁ? これが落ち着いていられるかっつーの! 特別ってどういう事よ? 吸い込まれそうな綺麗な瞳って何よ? アンタいつから専務とあんなに親しくなったの?」
胸ぐらを掴まれ首を前後にブンブン振られたから息が出来ず、酸欠で気が遠くなる。
このままじゃ、本当に森山先輩に殺されるかもしれない……
命の危険を感じた私は、専務とは何もないと必死で訴えた。
「怪しいな……」
「森山先輩、冷静になって考えて下さい。あの専務が私なんかに特別な感情を持つワケないじゃないですか……ここには、私よりずっと綺麗な森山先輩が居るのですから……」
「あ……そう言われれば、そうよね。大沢みたいな大学出たての小娘より、私の方が色気あるしね」
「そ、そうですよ~」
それは、先輩に殺されそうだったから出た言葉じゃなく、本気でそう思ったから。実際、森山先輩は本当に綺麗だもの。
その後も森山先輩の顔色を窺いながら厳しい指導に耐え、ようやく後数分で十二時になるって時、マナーモードにするのを忘れていたスマホの着信が鳴る。
ラインだ……
カウンターの下で自分のスマホをいじっていた森山先輩が「見ていいわよ」って言うから、恐縮しつつディスプレイを確認すると麗美さんからだった。