クールな次期社長の甘い密約

待ってましたとばかりに、留守番電話で繋がらなかったので、お礼のメッセージを入れておいたと早口で答える。


私としては、これで良しとなるはずだった。けれど麗美さんは不服そうに口をへの字に曲げ、半開きの目で私をチラッと見る。


「……茉耶ちんさぁ~専務の事ホントはどう思ってるの?」

「えっ?」

「大企業の専務だから茉耶ちんが躊躇する気持ちは分からないでもないよ。けど、好きだったらこんなチャンスはないと思わない?

専務には言い寄ってくる女性は星の数ほど居る。なのに茉耶ちんを特別な目で見てくれてる。恥ずかしいとか、そんな事言ってないで自分の気持ちに素直にならなきゃダメだよ」

「麗美さん……」

「せっかく可愛くなったんだもん。性格も変えなきゃ……人生一度っきりなんだから」


私を諭す麗美さんの目がキラリと光る。それが照明の光に反射して光ったんじゃないって事は鈍感な私でもすぐに分かった。


麗美さんの突然の涙に戸惑いオロオロするだけで何も言えない。そんな私の目の前に、麗美さんが自分のスマホを滑らせてくる。


「これ、見て……」


言われるままスマホのディスプレイに視線を落とすと待ち受けの画像が、お世辞にも可愛いとは言えない地味な女の子の写メになっていた。


「これ、誰だと思う?」

「さぁ? 麗美さんのお友達ですか?」


答えを聞いた麗美さんが涙を溜めた目でフッと笑い「分かんないよね」って呟いて私を見つめる。そして衝撃的な言葉を口にした――

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