クールな次期社長の甘い密約
―― 二週間後……
夜の帳が下り、すっかり暗くなった東関東自動車道は目立った渋滞もなくスムーズに流れている。仕事を終えた私は、倉田さんが運転する車で成田空港に向かっていた。
私と倉田さんが顔を合わせたのは、あの大喧嘩以来だ。そういう事もあり、まだなんか気まずくて私達の間に会話らしい会話はなかった。もう一時間以上、車内は重苦しい空気に包まれている。
なぜ私が倉田さんと二人っきりでドライブしているのかと言うと、終業間近に倉田さんから内線があり、海外出張に行っていた専務が今夜、成田に着くので一緒に来て欲しいと言われたから。
専務に会えるのは嬉しかったけど、倉田さんと一緒というのは正直気乗りしなかった。しかし私に拒否権などない。ゆえに、このどんよりとした空気に耐えているというワケ。
やっと専務と会えるんだもの。我慢しなきゃ……
実を言うと倉田さん同様、専務ともこの二週間は朝に少し顔を合わせたくらいでデートはしていない。海外出張だったから仕方ないんだけど……
そう自分に言い聞かせていたが、それでも専務から電話がない日が続いたりしたら、彼を拒んだ時の事が思い出され嫌われたんじゃないかと不安になる。
――早く専務の顔が見たい。
逸る気持ちを抑え空港方面に目をやると、ずっと無言だった倉田さんが口を開く。
「先日は少し言い過ぎました。すみません」
「えっ?」
まさか倉田さんの方から謝ってくるなんて思ってなかったから驚いて言葉に詰まる。