【NEVER】
誘水
飲水思源
まだ履き慣れないローファーを履き、私は床に置いていたカバンを手に取る。
「じゃあ、お母さんっ 行ってくるね‼︎」
「行ってらっしゃい、車には気をつけてね。」
「はーい、分かってる‼︎」
"遅刻しちゃう、遅刻しちゃう" とブツブツ呟きながら 私は家を出た。
今日はちょっと、寝癖が酷くて 寝癖を直すのに時間をかけていたら、時間を見るのを忘れていた、っていう……。
何とも、自分は馬鹿なんだ!!!って叫びたくなる衝動を抑えながら 走る通学路。
信号の待ち時間で頑張って、休憩して、信号が青になったら またダッシュ‼︎を繰り返して学校まであと少し……もしかしたら、余裕あるかも……なんて、思い始めた矢先に ドンっと角を曲がってきた人とぶつかってしまった。
「すみませんっ。」
私は速攻で頭を下げた。
そして、顔を下に向けたまま 学校までまた走っていこうと思ったら ガシッと腕を掴まれてしまった訳で……。
ってか、力 強っ‼︎
「おい、待て。」
あれ、もしかして相当 お怒りになってる?
いや、怒る気持ちもわかる、分かるんだけど……
「名前、教えろ。」
「……え?」
素っ頓狂な声が出た。なんで 私の名前?
え、なんかヤバいことに使われる?
「人の名前聞く時は、普通 自分の名前を先に言いません?」
"それに知らない人に名前を聞かれて答えちゃうのは 今時 小学生でも居ないと思います" と付け加えた。