【NEVER】

「悪い、NEVERの他の奴等にもお前を見せてやりたくて……こんなに面白いと思った女は久しぶりだからな。

そうだ、NEVERの姫になる気はないか?」

"姫になる気はないか" ?
え、どういうこと?お姫様、ってなりたくてなれるものじゃないでしょ?

それより、 "NEVER" って何?

普通の英単語の意味ではなさそうだし……

「……?壺倉?」

一点だけを見つめて、できる限り 頭をフル回転させて物事を考えていると 陽翔さんが私の顔を覗き込んできた。

……本当、無駄にイケメン。

数十分一緒に居たせいで この人の顔には大分 慣れたつもりだけど、それでも まだ至近距離だとドキッとする。

その整いすぎた顔が。

「顔、赤いぞ⁇」

「……え、嘘⁉︎
今日 日焼け止め塗らなかったから、焼けちゃったのかも!」

5月と言えども 日差しは強い。

今朝は日焼け止めを塗る時間すらなかったんだよね……だから 色付きリップとマスカラ程度にしかメイクしてないから、いつもよりも化粧っ気の薄い私の顔。

なんとなく リップとマスカラだけしたら 化粧してる感あるから いいかな……なんて甘い考えだったけど、よくよく考えれば 良い訳なかった。

……明日からは、ちゃんと早起きしよう。

寝癖直しに時間をかけても十分メイクできるくらいの時間に。

「あの…… "NEVER" って何ですか⁇」

おそるおそる聞いてみる。

"聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥" って言ったりするもんね。

聞かないよりは聞いたほうがいい、はず。

私の質問に 驚いた顔の陽翔さん。

……え、そんなに知っているべきような事柄なの?

まぁ、私 流行とかには疎いから……
流行に乗るのとかも、得意じゃないし。

「NEVERのこと、知らない……か。」

納得したような顔になる陽翔先輩。

何で⁇何に納得したの⁇

「この辺りでトップの暴走族だ。」

……ほう、暴走族だと。

そんな人に私は激突した挙句、捕まってしまったのか。

自然と強張る顔。

今更感は凄いけど、仕方ない。
暴走族を目の前にして落ち着いていれるほどの度胸は持ち合わせていない。

「安心しろ、お前に危害は加えない。」

私の頭をポンポンーと撫でる。

私、人の言うことは鵜呑みにするタイプ。

それに私を撫でる陽翔さんの笑顔は優しくて その言葉に嘘はないと判断した。

「俺等、学校では 屋上を溜まり場にしてるんだ。

多分、アイツ等も溜まっているだろうと思う。

俺の仲間の顔、見ていかないか?」

何だろう、少しだけ興味があるかも……

本来、足を踏み入れては入れない世界なんだとは思う。それでも 好奇心が抑えられそうにない。

「いいんですか?」

陽翔さんは笑った。

「いいに決まったんだろ、俺の自慢の仲間だぞ?」

"ほら、ついてこい" と私に背中を向けた陽翔さん、私はその後を追う。

重苦しい分厚いドアを開けたその先には 光が広がっていた。

……私は初めて、屋上に足を踏み入れた。
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