【NEVER】

井渫不食


さっきまでの階段とは打って変わって、パァーッと開けた屋上。

空が高くて、空が近くて、屋上を溜まり場にするのも頷ける。

NEVERの面々に気付かれないよう、私は陽翔さんの後ろにベッタリと張り付いている。

NEVERは暴走族である、という事実を知った以上 迂闊に近づくのは少し怖い。

でも、実際にどのような人たちが陽翔さんと一緒に暴走族をしているのか気になる。

「やっと来ましたか、陽翔。
集合をかけておきながら 最後に来る、ってどうなんですか?

というよりも、あのメッセージは何なんですか?

最後まで打ててない文を送るのは辞めて下さい、って何度言えば……」

言葉が途切れた。

「後ろにいる方は誰ですか?」

陽翔さんが4人の暴走族仲間の近くに座ったから 必然的に目立つ私。

1人だけ立ったままなんだもん。

だから 陽翔さんの近くに寄って座った。

「これ、さっきメッセージで言ってた面白い女。」

私はぺコリと頭を下げた。

「壺倉です、」

「黒羽です。
陽翔、壺倉さんの了解はちゃんと得ているんですか?」

黒髪の黒羽さん。

こんな人も暴走族なの?

他4人(陽翔さんを含む)は好き勝手 染髪していて(多分)、不良って言われて頷ける見た目(人を見た目で判断するのはいけない、なんていう綺麗事は今は無しにしてね)。

だけど、黒羽さんはそうじゃない。

大人っぽい雰囲気だし、優等生感の強い見た目……間違っても 陽翔さんのように制服を着崩したりはしなさそうな人。

まぁ、陽翔さんに小言を言ったりと 渡り合えているみたいだから 暴走族の仲間ではあるんだろうけど。

「大丈夫、無理矢理連れて来てない。」

「いや、屋上前の階段までは無理矢理 連行されて来ましたけど?」

思わず言い返してしまう、自分がしていたことを忘れた?

私が嫌がっても離してくれなかったのに?

「すみません、陽翔がご迷惑をおかけしました。」

「いえ、そんな 謝られるまでのことじゃないので……」

「そう言っていただけると有難いです。
陽翔も一言謝って。」

「……悪かった。」

2人は親子か?何なら、黒羽さんはオカンか?

「もう2度と あのようなことはやめて下さい。」

「まぁ、覚えてたら。」

人が嫌がることをしない、当たり前のことを忘れないでくれ。頼むから。

「ってか、また新しい女連れて来たのかよ。」

これはこれは、銀髪の子。
嫌味な言い方をしていて、ちょっと鼻に付く。

「新しい女じゃない、面白い女だ。」

「いや、然程 変わらねーから。」

やっぱり不良は彼女がハイペースでコロコロと変わるものなんですかね?

「まぁまぁ、ちょっとだけでいいからさ 陽翔の話も聞いてあげようよ。

ただ面白いだけで 女の子を屋上には連れて来たりしないでしょ?」

"ね?" と赤髪の子、その笑顔がとても可愛い。

「で、どうなんですか?陽翔?」

「NEVERの姫にしようかと思って。」

その言葉を聞いて 他4人はそれぞれに驚いた。

黒羽さんはその言葉を聞いて 陽翔さんのことを凝視した。

銀髪の子は "はああああ!?!?!?" と叫んだ。

赤髪の子は "嘘でしょ?" と声を漏らした。

金髪の人は目を見開いた。

「待ってください、壺倉さんと出会ったのはいつなんですか?」

「ちょっと前。」

「それなら ちょっと許可は出せませんね……、悪い方ではないとは思いますが 今は判断し兼ねます。」

と冷静に言葉を紡ぐ黒羽さん。

「俺は認めねぇからな!!!」

と怒りを露わにする銀髪の子。

「ちょっと、それは急すぎない?
可愛い子なら大歓迎なんだけど、ね。」

と困った顔を見せる赤髪の子。

「俺は陽翔に任せる。」

と淡々としている金髪の人。
< 5 / 9 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop