ドストライクの男
次の日の報告会。小鳥はタブレットに写し出された写真を見つめていた。
5101号室。
黒羽光一郎が居住する、スイートルームだ。
この部屋は一泊200万円する。
こんな高額な部屋に二か月も……。
だが、それは一般客に対する価格だ。
もし彼がオーナー制度の会員権を所有していれば、その金額の数十分の一の値段で宿泊できる。
だが、グランドステイKOGOレベルのスイートルーム、会員権も相当ものだ。
作家ってそんなに儲かるものなのか?
昨日、一旦納得した小鳥だが、よく考えると疑問はさらに深まり、怪しさが募るばかりだだった。
小鳥は写真を見ながら自分の思いを執事田中に伝える。
すると、彼は何でもなさそうに答える。
「黒羽光一郎様は元々お家柄が良いそうです」
なるほど、結局、あくせく働かなくてもいいご身分ということか、と小鳥はちょっとガッカリする。
そんな小鳥を見ながら、執事田中は笑いを噛み締める。
「お嬢様は相変わらずでございますね。女性ならお金持ちと聞くと、目の色を変え、積極的に接近しようとなさいますのに」
「お金? お金ならもう十分持っているわ」
「さようでございますね」
でも、と執事田中はさらに言葉を続ける。
「あの方を、魅力的だとお思いになりませんか? いろいろお気になさるのは関心があるということでは?」
今日の田中さんは変だ。いつも公平な目で人を見るのに……。
「現にわずかな時間でもお部屋から出られると、周りの女人は放っておかないようです」
魅力的ねぇ、と彼の彫刻のような裸体を思い浮かべ、確かに綺麗だったが……と小鳥は父の姿を思い出す。