ドストライクの男

十二時五分過ぎ、ベリ子が「小鳥~」と意気揚々誘いに来たが、一瞬にして顔を歪める。

「またパーカーにジーンズ!」

私服に着替えた小鳥の全身を眺め、べリ子はハァと情け容赦ない落胆の溜息を付く。

「何故お洒落を楽しまないの!」
「お洒落を楽しむ? それよりも機能性を重視する方が大切なのでは?」
「貴女それでも女子!」

ベリ子のお小言を聞きながら、カフェ・オータムに赴き注文を終えると、レジカウンター近くの席に着く。

店内はランチ時ということもあり混んでいた。男女比は四対六。
軽食中心と聞いていたので、男性がこれほどいることに小鳥は驚く。
だがその理由はすぐ解明された。

「流石コーヒー専門店。種類が多いわ」

大きなハンバーガーを頬張りながら、ベリ子はテーブルに置かれたメニューを眺め言う。

そう、店員がテーブルに置いた注文の品を見た途端分かった。
ベリ子の食べているハンバーガー然り、全てがアメリカンサイズで男性でも満足できるボリュームだったのだ。

小鳥は本日のお勧め『シーフードプレート』なるものを頼み、後悔していた。
ビックプレートの上には、大きなライ麦パンが二枚、シーフードサラダ、クラムチャウダー、フィッシュ&チップスが大盛り。

「ベリ子さん、良かったら……」一緒に食べて、と言おうとしたのだが、言葉を遮られる。

「僕もご一緒していいですか」

ハイ? と顔を上げると、神々しい笑みを浮かべた光一郎が、マグカップ片手に立っていた。

久々のご対面だ。

「キャッ、スイートルームの王子様!」

ベリ子のテンションが一気に上がる。
どうやら執事田中の言っていたことは本当だったようだ。
でも、王子様って……。

小鳥の思いを他所に、「どうぞ、どうぞ」と勝手に承諾するベリ子の言葉に、「ありがとう」と光一郎は小鳥の隣の椅子を引き腰掛ける。そして、コーヒーの入った大きなマグカップをドンとテーブルに置く。

これがラージサイズの上をいく3Lサイズか、と小鳥は巨大マグカップに見入る。

「小鳥ちゃんとお知り合いなんですか?」

そんな小鳥と光一郎を交互に見ていたベリ子は、興味津々に目を輝かせ、好奇心を満たすように質問を始める。

光一郎は黒い笑みを浮かべ、その好奇心に応えるようにシレッと宣う。

「ウーン、強いて言うなら、裸の付き合いかなぁ?」

< 13 / 61 >

この作品をシェア

pagetop