ドストライクの男

開け放たれたドアを、片手でバンとドアドンすると、ベリ子ことベリー・花子・ブラウンは、便器に顔を埋めるように掃除をする小鳥を呆れ眼で見下ろす。

「相変わらずの徹底ぶりね。本当、感心しちゃう」
「これがお仕事ですから」

当然だ、とクールに言葉を返す小鳥にベリ子は肩を竦める。

「仕事だとしても、私ならそこまでできないわ」

でも、と小鳥は、化粧が施されたベリ子の綺麗な顔をチラリと見る。そして思う。

美容に対する熱意と掃除に対する熱意、どちらも最終目的は『美』だ。何の違いがある。『できない』のではなく『しない』が正答な言葉ではないだろうかと。

「あっ、貴女また七面倒臭いこと考えているでしょう。本当、小鳥ちゃんって不思議ちゃんね。そんな難しいことばかり考えている女はモテないわよ」

モテ女を自称するベリ子の言葉に小鳥は、そうなのか、と首を捻りながらも、根拠はないが何となく、そうなのだろう、とその言葉を脳細胞にインプットする。

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