ドストライクの男
「彼女が美人だってこと内緒だぞ。コイツは俺のだからな」
「まだ、貴方のものと決まったわけではありません!」
ピシャリと言葉を跳ね返す小鳥に、光一郎は眼鏡を返しながら微笑む。
「でも、君は僕に惚れている。僕は君のものだよ」
ギュッと小鳥の肩を抱き、光一郎は秋人に言う。
「グランドステイKOGOも君の会社と取引するつもりだ。美味しいよ、君のところのコーヒー豆」
そう言って光一郎は名刺を秋人に渡す。そこには白鳥光一郎の名があり副社長の肩書きが印字されていた。
「エッ、もしかしてお前、白鳥佑都の親戚?」
「ああ、よろしくお願いします。オータムコーポレーション次期社長殿」
光一郎が悪徳商人顔になる。
「それから52Fの件ですが、あそこは桜木家の自宅で私の住まいなだけです」
小鳥が申し訳なさそうに付け加える。
「というわけで、秋人さん、お疲れ様でした」
光一郎の言葉に秋人は盛大な溜息を洩らし、ガックリと項垂れる。
「何だか、狐にでも化かされたような気分だ」
「それも美しい女狐にね」
光一郎は軽くウインクし、秋人の肩をポンと叩く。
その横で小鳥は思う。もしかしたら、女狐とは私のことなのか、と。