ドストライクの男
そして、今回のデートも……散々だった。
約束の時間を過ぎても光一郎は現れなかった。
小鳥は仕方なく光一郎の滞在する部屋に……そして、その目が見たのは……。
「あらっ、桜木……小鳥さんだったわね」
チャイムに応答し出てきたのは、べリ子の従姉マーサ・ブラウンだった。
彼女は真っ白なバスローブを羽織り、たった今、起きたばかりというように、気怠そうに乱れた髪をかき上げ、ドアを押える。
「Mr.光一郎は?」
「ああ、彼なら今シャワーを浴びているわ」
妖艶な流し目が部屋の奥を見る。
確かにシャワーの音がする。
「お待ちになる?」
含み笑いをするマーサに小鳥はニッコリ微笑む。
「はい。約束しておりましたので、待たせて頂きます」
部屋に入ろうとする小鳥にマーサは慌てる。
「あっ、でも、これから私とデートだから。それにほら、私もこんなだし」
マーサがバスローブを指さす。
「それもそうですね」
小鳥が頷くとマーサがホッと安堵の息を吐く。
「じゃあ、迅速に着替えて下さい」
「エッ?」
「だから、着替えて帰って下さい」
「なっ何で……。貴女、この姿見て何も思わないの!」
マーサの顔には訳が分からないというように狼狽の色を浮かぶ。
ガハハと大笑いが聞こえ、「そこまでだな」と楽し気な声が言う。