ドストライクの男
そして、薫が最終的に選んだのは、ウエストに大きなリボンの付いた、ドレープが華麗なブラウスワンピースだった。
おまけに、監視モニターで情報をキャッチしたのか、「素敵なドレスに眼鏡はやはり少々」と執事田中がコンタクトレンズを届けに来た。
流石、有能執事。
これには光一郎も驚いていた。
VIP専用エレベーターで55Fに降り立った小鳥は訊ねる。
「イエローのワンピース、初めて着ました。変じゃありませんか?」
「いや、君に凄く似合っている。髪も化粧もねっ」
「薫さんってスタイリストの他、ヘアメイクの技もお持ちだったのですね」
「ああ、それはアイツの趣味だ」
「趣味も極めればプロです」
なるほど、と光一郎は小鳥の全身に視線を走らせ納得するものの、何となくこの姿を他の男の目にさらしたくないなぁ、と思い始めていた。
「いらっしゃいませ、白鳥副社長」
黒服のウエイターが二人を出迎える。
デート先は会員制VIPラウンジ『皇帝』だった。
ここはアッパーフロアのイケメンエリートが利用していることで有名な、玉の輿狙いの女性が憧れる聖地だ。
べリ子も、一度でいいから訪れたい、と言っていた場所だ。
小鳥も掃除に入るだけで、客として来たのは今回が初めてだった。
「でも、私、未成年なのでアルコールはバツですが……」
小鳥の言葉に光一郎はハッと思い出し、苦笑いを浮かべる。