ドストライクの男
「少々お尋ねいたしますが」と小鳥は光一郎に耳打ちする。
「ここでは本名を名乗っているのですか?」
「俺のホテルだ。この場所のメンバーには名乗らなくても正体はバレている」
なるほど、VIP御用達の場所、それもそうか、と小鳥は納得気に頷く。
「副社長、お美しい方ですね」
若いウエイターが恥ずかしそうに小鳥をチラ見する。
光一郎の眼がギラリと光り、ウエイターを睨む。
「ああ、綺麗だろ。君も見たことあると思うけど、お掃除お姉さんだよ」
「ヘッ?」とウエイターは眼をむく。
「あの彼女がこの彼女! 女性って化けるものですね」
光一郎はフンと鼻を鳴らす。
「どんな姿だって彼女は美しい、それが分からないなんて君はまだまだ若輩者だね」
小鳥の腰に手を添えると、光一郎はウエイターに、案内しろ、というようにクイッと顎をホールに向ける。