ドストライクの男
「それにしても……」と光一郎はビシビシ感じる視線に目を走らせる。
「クソ、薫の奴、やり過ぎだ!」
「ん? 何がやり過ぎなんですか?」
「いや、何でもない」
光一郎はグッと小鳥の腰を引き寄せ、視線の先にいる男たちを牽制する。
「ちょっちょっと、光一郎さん、くっつき過ぎです」
「婚約者をエスコートするのに、この距離は適正だと思うけど」
シレッと宣う光一郎を小鳥が睨む。
「そんな可愛い顔で睨んでもダメージは与えられないよ」
光一郎がニヤリと笑う。
「逆に煽られいるみたいだ。たまらないね」
熱っぽい声が小鳥の耳を直撃すると、途端に小鳥は真っ赤になる。
しまった、と光一郎は慌てて小鳥を胸に隠すが、すでに遅しだった。
視線の先の男たちがざわめき出す。
そこに「バカやね」と含み笑いの声が聞こえる。
「薫、何付いて来てるんだよ」
光一郎がムッとする。
「だって、面白そうやない」
「フン、暇人が!」
どうやら、『三度目の正直』ではなく、『二度あることは三度ある』の方だったようだ。今回のデートも失敗に終わりそうだ。