ドストライクの男
「小鳥ちゃ~ん、ほんま、うち嬉しいわぁ」
「お前、飲み過ぎ」
酔えば酔うほど薫は女性らしい。
「光一郎の初恋は、小鳥ちゃん、あんさんや。それからズート片思いやってね、ようやく三日月はんに了承得て、晴れて婚約者の立場をゲットしたんやで」
酔っ払いはどうしてこうも、おしゃべりになるのだろう。
小鳥は冷めた目で薫の話を聞き流す。
しかし、恥ずかしい過去を第三者によって暴露された光一郎は一瞬固まり、酔っ払い相手に怒りを顕わにする。
「クソッ! 薫、覚えてろよ! 今度お前の愛しい霧ちゃんにアレ言うからな」
「それは、あかんでぇ。うち、酔っぱらってるから覚えとけんしぃ」
過ぎたるは猶及ばざるが如し。記憶を失くすほどアルコールを摂取するとは……小鳥はグレープフルーツジュースを飲みながら、おつまみの柿の種を口に入れる。
「小鳥、お腹は一杯になったか?」
「はい。サンドイッチもピザも美味しかったです」
「今度は寿司でも食べに行こうな」
「嬉しい! うち、魚政の上マグロ食べたい」
バチンと薫の頭を叩き、光一郎が言う。
「お前に言っていない!」
「痛ぁ~、暴力反対!」
薫は頭をナデナデしながら、涙目で小鳥に聞く。
「小鳥ちゃん、こんなんでええん? 男はもっとぎょうさんおるで」
「って、お前、何を惑わしているんだ。小鳥には俺しかいない!」
自信満々の光一郎を見ながら、小鳥は考える。
確かに、男はたくさんいる。
辺りを見回し、噂のエリートたちを見る。