ドストライクの男

「なぁ、小鳥ちゃんの理想の男ってどんなん?」

薫はチラリと光一郎を見、ニヤリと意味有り気に質問する。
そんなの考えたこともなかったが……と小鳥は思いながら考える。

「私を特別視しない人……でしょうか」

そう言えば、光一郎は昔も今も、私をただの女性として扱っていたかも……。
小鳥の脳裏に光一郎とのやり取りが浮かぶ。

「じゃあ、やっぱり俺はお前の理想像にピッタリだな。だって、俺にはお前が愛しい女としか映らないからな」

「いややわぁ、光一郎がこんな甘い言葉を吐くなんて」

気色悪~、と顔を歪めゲッと吐く真似をする。

「光一郎さんはいつもこんな調子ですが、違うのですか?」

「ちゃうちゃう。コイツ、ごっつい硬派なんやで。表面フェミニストぽう装ってるけど、中身はガチガチ初恋の人一筋。仕事外で女と一緒のとこ見たことないわぁ、こんな甘い言葉聞いたこともあらへん」

光一郎が真っ赤になる。

「せやから、早うコイツのもんになったてな」

薫はグイッとワインを飲み干し、「ほな、うちは帰るわぁ」と立ち上がる。

「そうそう、今日はものすごう協力してあげたんやし、飲み代は光一郎持ちやで。ご馳走さん」

「って、毎回じゃないか!」

光一郎は文句を言いながらも、「サンキュー」とその背に声を掛ける。

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