ドストライクの男
09)ハッピーエンドの前に
翌日、光一郎と小鳥は三日月のいる社長室を訪ねる。
「あら、案外、簡単にまとまっちゃったのね」
三日月は面白くなさそうに光一郎に言う。
その横で小鳥が頬を染める。
「約束は守りましたよ。正式に結婚を認めて下さい」
光一郎の言葉に、仕方がないわね、と三日月が頷く。
「約束?」と小鳥が光一郎を見る。
「ああ、十四歳の想いを十年持ち続けたら、小鳥との結婚を承諾するって約束」
「で、持ち続けちゃったのよ、この小鳥馬鹿は!」
三日月がチッと舌打ちする。
「その上、不動産会社B.C. Building Inc.とグランドステイKOGOの合併話も進めなくっちゃいけなかったし……」
「当たり前でしょう、跡取りの一人娘を嫁に出すんだから、中途半端なことは許しません!」
三日月がフンと鼻を鳴らす。
「もしかしたら、パパの事情って、合併の期日が私の誕生日ってこと?」
「もう、流石、小鳥ちゃん。冴えてるぅ!」
何て勝手な!
小鳥の米神に怒りマークが浮かぶ。
「だから、悠長にル・レッドで学んでいる暇もなく、父に付いて仕事を学びながら勉学に勤しんだ」
光一郎も「分かっただろ」と盛大に息を吐く。
「もしかして、デートの約束をした日、いなくなったのはそのため?」
「そう。でもあの日、三日月さんが突然訪ねてこなければ、本当はデートできたんだ。そこで小鳥に、待っていて、と言ってル・レッドを去ろうと思っていたのに……全く!」
ギロッと光一郎が三日月を見る。