【短編】塩系男子のススメ
思ったより全然走ってなくて、栄太くんのアパートにはすぐに着いた。
上がって、と促されて部屋に行くとさっきのお姉さんがいた。
にこにこと余裕なのかわたしを見て微笑んでいる。
「栄太、何も説明してなかったみたいで、びっくりしたでしょ。」
「ちょ、俺が話すから、黙ってて。」
あの栄太くんが珍しくよく喋る。
「え、栄太くん…別れ話ならはやく言って……」
涙の雫が垂れようとしたときだった。
「勘違いだよ、これイトコ。」
「えっ!」
「おばさんと帰省しようとしたときに、急な仕事入って、俺んちで待っとけって言われたらしくて。」
ごめん、と栄太くんのイトコは手を合わせる。
「芹ちゃんだっけ、お詫びにこれ貰ってくれない?新しい商品のサンプルなんだけど…。あと、栄太こんなやつだけど、よろしくね。」