【完】『浅草心中』
外記は障子を閉めた。
「殿様がなかなかお顔を出していただけませぬゆえ、綾衣は寂しゅうございました」
「すまぬ許せ、このところなかなか母上が口やかましくてな」
と、外記は来られなかったことを詫びた。
すると。
「…殿様のそういう素直なところを、綾衣はお慕いしております」
酒肴が運ばれてきた。
「さ、殿様。今宵はひさびさのお上がりでございますから、パァーッと景気よく参りましょう」
太鼓持ちが賑やかしに来た。
「…それもそうだな」
今宵は夜っぴいて飲もうぞ、というと賑々しく三味線に合わせて踊りがはじまった。