【完】『浅草心中』
まず吉原では引手茶屋という茶屋で、客に見合った遊女を仲介してもらい、遊女屋へ案内されてゆく。
このあといよいよ妓楼に登るのだが、新吉原遊廓ではいきなり枕を交わすような生々しいことはなく、まず、
「初会」
という儀式がある。
客が下座に座り、上座の遊女を待って、酒肴を整えてようやく遊女が来ると無言で杯を交わす。
形式ながらかための杯のようなもので、これで初会が終わる。
次に。
「裏を返す」
という登楼がある。
ここでも遊女は身体を許すことはなく、初会より打ち解けはするものの、ここで祝儀をはずんだりしなければならないので、なかなか金が要る。
その他に若衆や提灯持ち、果ては茶屋にもいくばくか包んで、だいたいトータルで五両ぐらいの出費は食う。
だいたい現代に換算して七十万円ぐらいとされ、さらに食事代を含めると百万円にはなったので、かなりの金額を覚悟して遊ばなければならなかった。