▷僕らは運命共同体◁
ーー今俺は感じている。
後ろからの冷たい目線を。
いち早くこの視線から逃れたい。
俺は歩く1歩の幅を広げ、スピードを上げた。
俺の前にいた、あの女の肩を掴み呼び止める。
「ーーおいっ!!」
「ーーはい?………っひ!!!?く、く、黒崎くん!!!?」
女はビックリしたようで、肩を震わせてこちらを振り返ると青ざめた顔になる。
怯えている顔。
…よく見る顔。
「…なになに??何が起こったの??」
コソコソと周りから声が聞こえる。
噂好きの女の声だ。
「また黒崎くん?夏休み明け早々にカツアゲ!?…しかも女子に!!?」
ーーしてねーよ。
「女にも容赦ないってホントだったのね…。」
ーーホントじゃねーよ。
イライラが立ち込める中、目の前で怯えている女の顔が目に入る。
そうだ。説明して、ちゃんと、話して、誤解を解こう。
『別に俺は、カツアゲしようと思ったんじゃなくて、ただ、落し物を拾っただけで ・ ・ ・ 』
よし、完璧だ!!
俺は左手をに強く握りしめて勇気を振り絞る。
ーージロリ
「ーー何見てんだよ。」
何言ってんだよ。
「見んじゃねーよ。」
ちゃんと台詞、頭で考えてたじゃないかよ!
怯えている顔2つ、出来上がってしまったようだ。
「ーーひっ!…こわ。……ちょ、もう行こうよ。」
「……あ。」
内心涙をする俺。
またやってしまった…。
「………っあ、あの!!」
先ほどの女。
やべ、忘れてたわ。
「私に何か御用でも……。」
ビクビクと指の先まで震えている。
そんなに俺って怖いかなぁ~。
「…あ、いやすまん。こ、これ、落としたぞ。」
「ーーっひ!」
……ん、悲鳴?
女は俺の手からハンカチを素早く(奪い)取ると「ありがとうございます。」と言って光の速さのごときスピードで俺の目の前を去った。
「………こわー。黒崎くん。何してたかわかんなかったけど。」
「さっき、睨まれてた女子達がカツアゲって言ってなかった?」
「こんな朝っぱらから!?しかも2学期初日に!?」
「やっぱり、黒崎くんって不良だったのね………。」
…やっぱり、今日もダメだった。
俺は、深い深いため息をつく。