Wish
Ⅰ
「実乃、俺と結婚してくれませんか」
付き合ってた長谷川慎から突然のプロポーズ。
でも…
「ごめんなさい。
私と結婚してもあなたが不幸になる。」
「なんでだよ!?」
「本当にごめんなさい。」
「おい!実乃待てよ!」
慎の叫び声を無視してその場を走り去った
私には結婚してはいけない理由がある。
きっとこれから先もずっと結婚できずに生きていくだろう。
「ちゃんと理由話せなかったな…」
そう呟いて、厳しい寒さが一段落して少し暖かくなった街中を歩いていた。
ドンッ
「キャッ」
後ろから急に男性がぶつかってきてバランスを崩し転んでしまった。
「すみません!大丈夫ですか?」
「…大丈夫です」
「ほんとすみません。
お怪我はありませんか?」
「はい…大丈夫です。」
手を差し伸べられた。
迷わずに差し伸べられた手を掴むと、ゴツゴツしていて男らしい手だった。
「すみません急いでいて。」
大きな荷物を持って走っていた男性は
少し時計を気にしながら、私を気遣ってくれた。
「時間大丈夫ですか?
私はもう平気なので。」
「本当にすみませんでした。」
そう言って彼はまた走って去っていった。
「あれ…どっかで見た事あるような…」
サングラスを掛けていてちゃんと顔を見ることが出来なかったけど、どこかで見たことのある顔のような気がした。
この時はまだ彼が誰であるのか思い出すことが出来なかった。