君が嫌いな君が好き
男の人の手って、私が思っている以上に大きいんだな。

身長と同じく、ただでさえ小さい私の手がさらに小さく見えるよ。

「まずは何から乗る?」

久米が聞いてきた。

「久米さんが乗りたいもので…」

「泰成でいいよ」

私の話をさえぎるように、久米が言った。

「えっ?」

「俺も名前で呼んでるんだから、君も名前で呼んでよ。

その方が恋人同士って感じがするから」

「は、はい…」

そう言った久米に、私は首を縦に振ってうなずいた。

「泰成…」

名前を呼んだ私に、
「うん、その調子」

久米はニコッと、えくぼを作って笑った。
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