君が嫌いな君が好き
ああ、そうだった。

久米が私を遊園地に連れてきたのは、乙女ゲームのデートシーンのためだった。

リアリティーがないってケチをつけた彼に、講義だと称されてデートをしているんだった。

「書けると思う」

そう答えた私に、
「思うだと?

せっかくわざわざ連れてきてやったのに」

久米がジロリとにらみつけてきた。

「はい、書けます。

大丈夫です、心配しないでください」

すぐに私は言い返した。

「そう言われると逆に不安だな…」

久米はやれやれと言うように息を吐いた。

じゃあ、どう言う風に答えればよかったんだよ…。

呆れる私だけど、彼とのこのやりとりが楽しいと思っている自分に気づいた。
< 43 / 65 >

この作品をシェア

pagetop