君が嫌いな君が好き
そうだよね…。

そう言うことだよね…。

久米には久米で、相手がいたんじゃない。

それもどこかの財閥のご令嬢で、私とは全然違い過ぎるじゃない。

「――何だったんだ、私は…」

カフェを出た私の足取りは重くて、エミちゃんからもらったおみやげが入った紙袋も重かった。

一瞬どこかに紙袋を捨てようかと思ったけれど、やめた。

そんなことをしたって、どうにもなる訳ではない。

紙袋を捨てることによって久米の結婚話が消えるのならば、誰だって苦労しない。

「王子様は、現れませんでしたー…」

小さな声で歌うように呟いたら、虚しさが増しただけだった。

バカバカしい…。

滑稽過ぎると言ったらありゃしない…。
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