君が嫌いな君が好き
何で私の名前を呼ぶのよ…。

そう思いながら、私は声の主の方へと振り返った。

「――久米さん…」

声の主の名前を呼んだら、
「泰成でいいって言ってるでしょ」

久米が気に入らないと言うように言い返した。

あなたの名前なのに何が気に入らないのよ。

そう思っていたら、
「少しだけここを離れて話をしてもいい?」

久米が言った。

ああ、結婚するって言う話をするのか。

そう言うことですよね。

私は深呼吸をすると、
「いいですよ」
と、答えた。

「じゃあ、ついてきて」

私の答えに満足したと言うように、久米は背中を見せると歩き出した。

そんな彼の後を追うように、私も歩き出した。
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