君が嫌いな君が好き
「自分でも驚いてるくらい本気だよ?」

久米はそう言ってニヤリと口角をあげて笑った。

本気って、何が?

またそうやって、私をからかおうとしているの?

バチーンッ!

その音に驚いたのは私の方だった。

「あっ…」

いつの間にか動いて、久米の頬を殴ったその手に視線を向けた。

私…今、何をやったの?

本気だとか何とか言ってからかってきた久米に怒ったのは事実だけど、何も殴ることなんて…。

「ご、ごめんなさい…」

震えた声で謝って、あげていた手を下ろした。

その場から逃げようと背中を見せたら、
「何で殴ったの?」

久米に腕をつかまれた。
< 57 / 65 >

この作品をシェア

pagetop